ワーク・ルールズ!―君の生き方とリーダーシップを変える ラズロ・ボック(著)
社員は善良だと信じているなら、彼らと情報を共有することを恐れてはならない
2006年から9年の間にGoogleの従業員が6千人から6万人に増え、世界40カ国に展開。この急成長の中で、Googleの人事システムを設計し進化させてきた、人事担当上級副社長ラズロ・ボックによる著書。
550ページを超える大著ですが、夢中になって2日間で読了しました。
人事(採用・教育・評価)を主題としているのだが、その中身は、リーダーシップ、マネジメントから、生き方や思想に至るまで幅広いです。
本書は人事部門に勤めるわけでもない私にとっても仕事の価値観を深く考えさせられるものがありましたし、良いチームをつくりたいと思う全てのビジネスパーソンにオススメしたい一冊になりました。
内容は、Googleの成功だけではなく、失敗についてもとことんオープンに書いています。私たちはメディアを通して、Googleの人事について以下のような認識をしていないでしょうか?
●学歴至上主義、超エリートしか相手にしない
●面接では、難問奇問な洞察問題の質問をする
●超高額報酬の表彰制度がある
これらは全て事実だったのだが、著者たちは間違いを認め改善したことを説明しています。
●卒業して最初の2~3年を過ぎると、学校の成績から仕事の成績は予測できないことがわかった
●難問奇問の解答力と仕事ぶりの予測には相関がない。本当に優れている人と、回答スキルだけの人を区別する方法がない
●超高額報酬は一部の主要プロダクトの開発チームのためだけの遠い存在。認められるかどうかの境界線は、どこなのかという不平等が常にあった。金額の大きさを褒め称えてしまったことを改め、報酬ではなく成果を称えなければいけない
これら本書で一貫していることは、積極的に実験に取り組むことです。
それを実現しているのは、「思慮深い失敗に報いる」という方針が、人事のイノベーションと位置づけて適用されているからなのだと思いました。
しかし、失敗覚悟で実験に望む、これには膨大な労力とコストがかかりそうです。そこで著者は、検索広告事業で膨大な利益を上げるGoogleにしかできないのでは?エリート集団のGoogleだけの話しでしょう?という疑問に丁寧に回答しています。
また、私が特に印象に残ったポイントを2点紹介したいと思います。
◆困っている人に手を差し伸べる◆
著者がGoogle入社前に在籍したGE。その人事戦略といえば、ジャック・ウェルチの「アップ・オア・アウト(毎年下位10%を解雇する)」です。
その反動だろうか、Googleでは下位5%の社員を特定して、手を差し伸べるといいます。その理由や再生工場として機能した"思いやりのある現実主義"は、解雇が容易ではない日本企業にとって必見のポイントになりそうです。「第8章 困っている人に手を差し伸べる(P293)」で詳しく論じられています。
◆社員が一番必要としている時に寄り添う◆
大多数の会社が社員に不幸があった場合、遺族に死亡手当を用意しているが十分ではありません。そこで、Googleでは、(他社ではあり得ないほど)必要にして十分な手当を用意することが決定されました。
しかし、当初この決定は公表しないことを選択しました。理由は、宣伝するのは不謹慎に思えたことと、入社したい理由や辞めたくない理由にしてほしくないと思ったからだといいます。
しかし、公表しなかったのは、著者の判断ミスだという結論に至りました。(もっと早く公表すれば良かったという意味で)。
この理由・エピソードを読んで私は思わず目頭が熱くなりました。この時はカフェで読んでいたため、我慢するのが大変です。詳細はここでは書ききれないので、「第11章 社員が一番必要としている時に寄り添う(P424)」を参照してみてほしいです。。
やはりこの2点にも共通して、透明性「オープンが原則」が作用していると言えそうです。
いや、この2点だけではないでしょう。
上記の人事にまつわる実験も、目的を明確にする。オープンに説明責任を果たし透明性を担保する。社員に発言権が認め耳を傾ける。これを愚直に行っているから社員は主体的に取り組むことができるのだと思います。
著者は、ささやかな思いやりと資源を投じるだけで、とてつもなく大きな結果をもたらすことができるといいます。
これは、人事だけではなく、全てのチームで応用することができることだと思います。
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