採用基準 伊賀 泰代(著)


【書評】世間の評価に流されず、自分自身の生き方を追求するために必要なこと


DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌、「読者が選ぶベスト経営書2013」にて、第2位にランクインした本書。コンパクトなソフトカバーの書籍ながら期待を裏切らない内容です。

(ちなみに、第1位は、経営戦略全史 三谷宏治著、第3位は、世界の経営学者はいま何を考えているのか 入山章栄著)



率直な感想は、

●書いてある内容は「採用基準」ではなく「マッキンゼーのリーダシップ論」である


●米国企業 対 日本企業 で書かれているが、実際には、「マッキンゼー」対「その他の大企業」ではないか


●故に、タイトルの"採用基準"には違和感を覚える

※私ならば"世間の評価に流されず、自分自身の生き方を追求するために必要なこと"と題するでしょうか(しかし、それではこの本はこんなに注目されなかったでしょうが。)



このタイトルなら、就職活動をする学生が手に取ることも多いと思います。しかし、本書が再三に渡り日本企業の体質を批判しているのであれば、(少なくとも現状は)日本企業の採用基準は本書の水準に達していないということになるかと思います。

つまり、本書は就活生のノウハウ本にはなりません。



とはいえ、本書で書かれているリーダーシップ論には頷けます。

以下のように複数の章に渡って組織のあるべき姿について一貫した主張がなされている点が興味深いです。


「全員がリーダーという意識をもつチーム」対「1人のリーダーと複数のフォロアーのチーム」(*1)


「放射状の組織図(プロジェクト型組織)」対「通常の組織図(機能型組織)」(*2)


その主張とは、

「1人の天才的なスーパースター待望論」ではなく「あらゆる分野で働く名もない数多くのリーダーが必要だ」(*3)ということです。



本書は就活生が読むならば、「採用基準」でななく、就活生側からの「企業選定基準」となるでしょう。


そして、リーダーシップを発揮することが、"世間の評価に流されず、自分自身の生き方を追求するために必要なこと"であり、マッキンゼーの価値観に深く共感させられる一冊でした。


*1 第2章 採用したいのは将来のリーダー「リーダシップは全員に必要」 第4章 リーダーがなすべき四つのタスク「その3:決める」


*2 第5章 マッキンゼー流リーダーシップの学び方「基本動作3:自分自身の仕事のリーダーは自分」


*3 第6章 リーダー不足に関する認識不足「カリスマリーダーではなく、リーダーシップ・キャパシティ」

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