トルネード キャズムを越え、「超成長」を手に入れるマーケティング戦略 ジェフリー・ムーア(著)
【書評】原書から20年経っても色褪せない理論。今こそアカデミックに読み直したい
本書の原稿の締切は1995年6月とのことだから、もうすぐ20年が経過しようとしています。しかし、本書の理論は全くもって色褪せていません。
ハーバード、スタンフォードなど名だたる大学の教材に採用されているように、本書で取り上げられている内容が、直近の事例で当てはまるものは何か?また、当てはまらないものは何で、その原因は?と、職場などでケーススタディをしてみても面白い。そう思わせてくれる一冊です。
まずは、内容のおさらいから。
●本書では、プロダクト・ライフサイクルにおいて、以下の3つの段階の移り変わりをどう乗り切るかを主題としている
1ボーリング・レーン・・・導入期から成長期に突入
2トルネード・・・成長期
3メイン・ストリート・・・成長期から成熟期に突入
●この3つの段階において、マーケティング戦略はまるでオセロを裏返すように真逆の行動を必要とされる
●上記にあわせて適切なマネジメントを行わなければ、真逆の目標を掲げ自滅してしまう
特に、トルネードからメイン・ストリートは、成熟期において依然高い水準で利益が上がっているにもかかわらず、成長期が永続的に続くものと錯覚し、成熟期への方向転換(真逆といえるほどのものである)が遅くなり、ジリ貧になるケースが思い浮かぶのではないでしょうか。
成長期から成熟期の移行をいかに乗り切るか?そのとき必要な戦略は?資源配分は?この理論の必要性は原書から20年経っても色褪せていません。
日本では失われた20年呼ばれて以降、イノベーションが乏しいといわれています。イノベーションを求めることは確かに必要だし美しい。
しかし、たまには、コモディティとうまく付き合い、成熟した社会をどう生き抜くかという議論を深めてみても良いのではないでしょうか。
ここで、本書に習って強者 対 弱者の理論(明言されていないがまさにランチェスター戦略の実践です)で少々直近の事例を考えてみたいと思います。
●成長期まっただ中の LINE。その戦略は、ゲームやマンガなどパートナー企業と形成するホリゾンタル(水平型)だ。そこで弱者の comm や KakaoTalk はどのように対抗すべきだろうか?
●発売から5年と成熟期を迎える 強者の iPad。一方 弱者の Kindle Fire の躍進も目覚ましい。その差別化ポイントや価格戦略とは?
●成熟期を経過した薄型テレビ。強者の日本企業が、弱者だったはずのアジア企業に取って代わられてしまった。どのように成し得たのだろうか?
挙げればきりがないし、深堀したいところはここでは差し控えますが、本書の内容をもとに読者それぞれの業界でそれぞれの事例を議論してみることは非常に有意義だと思います。
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