キャズム Ver.2 増補改訂版 新商品をブレイクさせる「超」マーケティング理論 ジェフリー・ムーア (著)
【書評】古くて、当たり前。それなのに新鮮で、心に響くマーケティング理論
初版『Crossing the chasm』が米国で発売されたのが1991年、改訂版第二版『キャズム』が日本で発売されたのが2002年、そして、本書『キャズム2』が発売されたのが2014年、本書は改訂版第三版なので本来は『キャズム3』というべきかもしれません。※原書のタイトルは、『Crossing the Chasm, 3rd Edition』
ほぼ十年ごとに改訂版が発売され、事例に登場する会社が刷新されるますが、本書の論点は未だ変わりません。そして、更に十年後にまた改訂版が出版されるかは分かりませんが、間違いなく社会では同じ状況が繰り返されていることと思います。
米国のマーケティング関係の講演や書籍ではたびたび引用され、キャズム理論を知らない人はいない、という前提で話が進む程といわれてます。しかし、私の回りにいるIT業界のマーケターであっても意外なほどキャズム理論を知る人は少ないです。
参考までに他の書籍とAmazonレビュー数で比較してみました。※本投稿時点
■イノベーションのジレンマ (著)クレイトン・クリステンセン(2001年)
・・・Amazonレビュー144件
■ブルー・オーシャン戦略 (著)W・チャン・キム(2005年)
・・・Amazonレビュー150件
に対し、
■前版の『キャズム』 (2002年)
・・・Amazonレビュー42件
このように、日本国内において、キャズムはまだまだ定着していないといってもよさそうです。
このギャップについて書かれた前版『キャズム』のAmazonレビュー「もう一つのキャズム」(投稿者: On the waterさん)から少々引用します。
※このレビューは秀逸なので、ぜひを参照を。
キャズム理論を知り、喜び勇んで事業に望もうとすると、そこにはどうしても話が通じない人たちがいる。それは下記のような人々だ。
・最初から大きな市場へのアプローチを求める経営陣
・裏づけのない右肩上がりの曲線を求める上司
・アーリーアダプター一社を獲得したたけで天下を取ったように触れ回る営業
・ハイテク製品が宣伝広告だけで売れると勘違いしているマーケティング担当。
(中略)キャズム理論と現実に起こっている事をベースに説明しようとすると、見事なほどに相手は拒絶反応を示す。
これらの状況は、おそらく初版が発売された1991年、いやそれ以前から変わっていないでしょう。
なぜでしょうか?
それはおそらく本書に「真新しいことは書いていない」からかと思います。
この議論はhow-toで簡単に解決できる問題ではないのです’。
にも関わらず、本書が(一部の層に)熱烈に支持されているのはなぜでしょうか?
それは、「イノベーターたちがなんとなく感じていたことと過去の苦い経験が一つのフレームワークの中で示され、それが彼らの将来の意思決定に有効であると判断された」からかと思います。
本書は、要約された一部分を読んでも心に響きません。一冊わずか330ページ程度、ハイテク産業のみならず、新しいことをやりたい全てのマーケターと、中長期の戦略を求める営業マネージャー/R&D部門のマネージャーには、ぜひ通読されることをお勧めしたいです。
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